最近チャートを注視している方は、金（ゴールド）の動きが少し微妙なことに気づいているかもしれません。

昨日は長い上ヒゲを伴う小陰線で引けました。一見すると調整が始まりそうですが、実際には明確なブレイクダウンはしていません。価格は日足のボリンジャーバンド中軌と上軌の間でうろうろしており、典型的な高値圏でのレンジ相場です。要するに、今は過去の高値・安値をどちらに抜けるかを待っている状態で、抜けた方に方向性が出るでしょう。

ファンダメンタルズ面では、11月のADP民間雇用者数が大きく減少し、過去2年半で最低となりました。データを詳しく見ると、主に中小企業のリストラが影響していますが、公式統計によれば全体のリストラ規模はそれほど大きくありません。また、ADPのデータはこれまで労働省の発表と乖離することが多く、業界の共通認識としては「そこまで重視しなくていい」というものです。

同時期のISM非製造業PMIは52.6で、前月の52.4とほぼ横ばい。サービス業はまだ安定しており、GDPが崩れることはなく、インフレも現状のレンジ内に収まっています。

現在、市場は12月のFRB（米連邦準備制度理事会）による利下げを待っていますが、これはほぼ確実と見られ、すでに織り込み済みです。ただし、一つ変数があります：FRB議長の交代です。そのため、おそらく「利下げ（ハト派的な行動）」自体はあるものの、声明文ではリスクへの警戒（タカ派的な表現）がなされるという「両面作戦」になる可能性が高いでしょう。

資産価格の観点から見ると、金の現在の価格には利下げ期待がすでに一部織り込まれています。短期的な調整？ それはテクニカルな調整に過ぎず、トレンド始動前のよくある動きです。実際に利下げが実施され、加えてこの数年で世界の中央銀行が金を買い増してきたことを考えると、今後レンジを上抜けて上昇トレンドに入る可能性はかなり高いと言えるでしょう。